「The Wake」感想 この物語の登場人物は、どう思ったか。
Steamで現在ハロウィンセールを行っており、色々買いこんでやっているのですが、その中の1つのゲームのお話です。
「The Wake」
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恐らくほとんどの人が持っている「親」「家族」にまつわる苦い思い出の物語というよりは独白に近い物になっています。
ある日”彼”は意識不明の状態で病院に運ばれます、その後一時的に意識が戻った”彼”は妻に、特殊な日記を渡します。
その特殊な日記は何故か、ところどころ暗号化されていました。
妻は、それを解読していく事で”彼”の生まれてから今日にいたるまでの心情が書いてありました。
その始まり、そしてすべてが、この1文にまとまっています。
「つまるところ、私の人生はこの一文に尽きるのだろう。<私の言葉はすべて嘘だ>と」
ゲーム自体は章立てになっており、1章ごと暗号を解読し読み進めていくという単純なもので、ボリュームも数時間あれば終わる程度の内容になっています。
なので、このゲームの魅力の大部分は語られる内容です。
このゲームは作者の自伝の部分が混じっているらしく、半分ノンフィクションのような内容となっています。これを知っているか知っていないかで物語に対する受け取り方が、若干変わるかと思いますので、先に記載しておきます。
さて、今はどうか知りませんが、国語の現代文の問題で、よく出てくるタイプとして、「この時この登場人物はどう思ったでしょう。」というものがありました。
回答する側としては、そんなのどうでもいいや、と思いながら前後の描写などから、おそらくこんな感じではないかという回答を導き出します。
それに対し採点者、出題者は同じように前後の文章の繋がりから正解、間違いが記されてきました。
”では、その所謂正解とよばれる回答というのは本当に作者が思った事なのか。”この手の問題が嫌いなタイプが持ち出す理屈にそんなものがありました。
大抵はそういわれた相手は苦笑するか、日本語の文法について説明するか、回答にそう書いてるし、と言ったりするでしょう。
ですが、作者”自身”が書いてる”自身の出来事”のはずなのに”自身がウソをついてる”というどうしようもない確信を持っている時、”本当の事”とは何を指し示すのでしょうか。
よくわからないことを言ってるように聞こえますか?では少し言い換えます。
作者”自身”が”自身の出来事”のはずのなのに、それを”文章として、うまく書き出せてない”というどうしようもない確信を持っている時、”本当に伝えたい自分の感情、気持ち”をどうやって読み取ったら良いのか。
だれもが知っています、”言語”は意思を伝える手段において万能ではないと。
普段は気に留めないその事象ですが、大きな転機に来た時、衝撃的な出来事を受けた時、私達はそれを理解しようと納得しようと”言語”を使います。
ですが自分の気持ちが、どうしようもなく”言語”では表現しきれない時、その時の絶望感は”言語”で語ることは難しいと思います。
それでも表現しようと、もがきながら文章を推敲し、表現を変え、1文1文血反吐を吐くような思いで書き出していく、決して正しく自分を表現しているとは思っていなくても、そんな文章がこの物語を構成しています。
プレイヤーたる私たちは、そんな文章を叩きつけられ、問われるのです。
「この時、登場人物である”彼”はどう思ったでしょう。」と
宇宙人が侵略してくるわけでも、ゾンビが蔓延するわけでもない。
ただただ、悩み苦しんだ人の半生を言語化するということが、如何に難しく、如何に伝わらないか。
それでも伝えようとした文章から、精一杯彼の気持ちを推測していくとき、ただの文章で涙するし、深く傷つくのです。
物語を読み終えた時、問いに対するプレイヤーの解釈が正解か、間違いか、
本当の事とは何か、幾通りの読み方があるでしょう。
だからこそ、最初ですべてはこの一文に集約されるのです。
「つまるところ、私の人生はこの一文に尽きるのだろう。<私の言葉はすべて嘘だ>と」